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童話の楽しい世界を紹介します。
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なぜ?

なぜ、そんなに下ばかり見詰めているの?

下ばかり見詰めていても、つまらないだけさ。

なぜ?

なぜ、そんなに周り ばかり気にするの?

横ばかり、ながめていても息が詰まるだけさ。

さあ、

顔を上げてごらんよ。

きっと、なにかが見つかるはずさ。

遠くに見える山の頂から満月が昇るころ、

丘の上では、虫たちの音楽会が開かれていました。

タンポポは、とても幸せな気分でした。

だって、どの虫たちの演奏もすばらしく、とても良い音色

だったからです。

タンポポには、ある予感がありました。

その、すっと伸びた茎の先には、

タンポポの子供たちが魔法の傘につかまり、

今か今かと旅立ちの時をまっていました。

その時、タンポポの頬をやわらかな風がそっとなぜました。

子供たちの持った魔法の傘は、フワリと風に乗り

それぞれの方向へと旅立って行ったのです。

ある者は、空高く飛んで行きました。

そしてある者は、月明かりに照らされて、下の街へと向かったのです。

私は、風に乗り丘の下の街へとやって来ました。

そこには、美しい声で歌う少年がいると虫たちの話で聞いていたからです。

その少年は、街の広場の噴水の近くで小さな

竪琴を弾きながら歌っていました。

私は、その少年のそばにゆっくりと舞い降りました・・・。

少し栗色の軽くウエーブのかかった長い髪、

まるでエメラルドのように輝く瞳、

そして透明な歌声・・・。

そのどれもが、私の好みに合いました。

だから私は、その少年をすぐに気に入ったのでした。

しかし、少年の歌に耳をかたむける人はごくわずかでした・・・。

人間たちには、少年の歌は美しく聞えないのでしょうか。

少年の足元には、くすんだ色のコインが二三枚転がっているだけでした。

でも、少年はそのコインを大切そうにポケットにしまうと帰っていきました・・・。

次の日も、少年はその場所にやって来て歌いました。その次の日も、そのまた次の日も、

しかし、ほとんどの人がただ少年の前を通り過ぎて行くだけでした・・・。

少年の歌う場所の、道をへだてたむかいに小さなパン屋がありました。

そのパン屋は、母親と少女が 二人で店をきりもりしていました。

少女は、とても可愛らしく、そして、

とてもよく働き母親の仕事を助けました。

そんな少女ですが、時たま仕事の手を休めて道をへだてた広場を

じっと見つめている事がありました。

そこに、少年の姿があったからです・・・。

道をへだてたパン屋にも、かすかにではありますが少年の歌声が聞えてきたのです。

少年は、いつも家に帰る前に、いちばん安いパンを少しだけ買って帰りました。

たまに、少年の姿が見えない日には、なんとなく少女にも

元気がないように見えたのでした・・・。

ある日の事です。

昼間でていた入道雲が、まるで命を持った生き物のように動き出して

厚く空をおおうころ、ポツリ、ポツリと雨のしずくが落ちてきました。

少年の髪を、雨がぬらし始めました。

雨は烈しく、そしてだんだんと強くなり少年の体を打ちました。

広場を行き交う人々は、足早に雨をさけて広場から散っていきました。

遠くに聞こえていた雷鳴が、徐々に街の広場にも近づいてきました。

大きな雷鳴の音に、少女は思わず耳をふさぎ目をつぶりました・・・。

そして、そっと顔を上げた少女の目に、少年の姿が飛び込んできました。

少年は、この雷鳴と雨の中でも歌い続けていたのです。

まだ、いつもほどのコインが集まらないためでしょうか?

それとも、自分の歌が認められない鬱屈した気持ちのせいでしょうか?

とにかく、少年はこの雨の中で、いつものように歌い続けていたのです。

その姿をじっと見つめる少女の心の中に、何か熱いものが込み上げてきました。

少女は、母親が止めるのもきかずに雨の中へと駆け出して行きました。

少女は、少年の横へ駆け寄ると、少年と一緒に歌いだしました。

少年と少女の顔を、いくすじもの水滴が流れて落ちて行きました。

時おり、稲光が光り、暗闇の中に二人の姿を浮び上がらせました。

雨と風は、二人の体を打ち、そして揺らし続けました・・・。

しかし・・・。空をおおう雲は風に押し流され、雨もいつの間にかあがりました・・・。

そして空には、美しい虹が輝いていました。

二人はお互いの心の中にも、美しい虹が架かったように思えたのでした・・・。

それから、しばらくして。

少女は、少年の横に咲くタンポポの花を見つけました。

少女はその中の、綿毛の付いた茎を一本抜き取ると

ふうーっと、息を吹きかけました。

すると、タンポポの綿毛は、風に乗りどこまでも、どこまでも、

空高くそれぞれの方向へと、旅立っていったのでした・・・。





タンポポの詩  終り
(「ブログ童話館アートメルヘン」から) 
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